上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

ずんずん歩いていると雨が降ってきた。
これはいけねーとはて右に左にあるコンビニどちらに入ろうか迷っていると、前を歩いていたおばはんが左のコンビニに入ったため、では私は右にと、まるでレジに並んでいる客のように慣性的な動きを知らない間にとっていた。
右頬に中ぐらいの雨粒が当たったのがわかった。
コンビニの中を何も考えず周遊していると大きな鏡に等身大の自分が写った。老けたな、太ったな、背ぇ伸びねーかな、髪切らないとな、証明写真撮らないとな、と、何故だか知らんが全くおもしろくない、うっかりしていると憂鬱になってしまう馬鹿野郎なことばかりを考えている私自身に気が付き、この野郎、とむっとした。
さっさとここを出て駅へ向かおう。
そういえば私はずっと駅を探していたのだった。
親父の革靴を履き、800円のリクルートバックを持ち、颯爽と夕暮れの大阪は福島の街並みを横目に阪神線福島駅を探していたのであった。その時にちょうど雨が降ってきただけのことであったのだ。
コンビニの店員にすいません顔をし、福島駅の方角を聞く。あと信号2つ分歩いたら到着です。もっとすんなりわかるようしとかんかい福島、なーんて小声で吐き出し自動ドアを出る。
このとき気が付いた。今日の私は怒りん坊のちんちくりんであることに。
雨は容赦なく降り続いている。
信号2つ分を歩き終えようとしたとき、前から電話をしながらこっちへ向かってくるおばはんにぶつかるぎりぎりで気が付いた。私は高校時代まで野球をしていたため、こういう反射神経的な場面には自信があった。まるで私がファーストランナーで牽制球が来たときに帰塁するような、そんな気分に陥り、これぞ久しぶりと言わんばかりにすっと体勢を左に傾け、しゃっとすれ違った。がしかし、身体自体は避け切れたものの私の800円のよれよれリクルートバックがおばはんの手荷物にガシーンとぶつかった。まーこんなこともある、これぐらいだったらセーフだ、私は。そう信じていたかったが、どうやら思うにおばはんのあの手荷物は、あの形、あの感触、あの音を総合的に考えると、ケーキだ。そうだ、あれは仕事帰りに子供たちに食べさせるために買ったケーキだ。そして電話相手もきっと子供だ。子供は楽しみに母親の帰りを待っていたのだ。さぞかしケーキケーキして待っていたのである。
やってしまった。そう思いながらも私は振り返ることなくろんろん歩いていた。なぜならもう目の前が阪神福島駅なのだ。ポケットには金券ショップですでに買っている三宮行きの切符も入っているのだよ。
一瞬おばはんの「あっ」という声が背後で聞こえた。その瞬間にケーキケーキしている子供たちのあらら残念そうな顔が頭に浮かんだ。それでも私はすんすん歩いた。
親父の革靴はもうびしょ濡れ、よれよれリクルートバックは変わらずよれっよれ。
私の頭はちんちくりん。もうどうにでもなれよ。私の夢を叶えてください。
肩に溜まる雨を落としたかったが、右手によれっよれを持っていることに気付き諦めた。

とある日のなんの変哲もない一日の描写である。


| HOME |


Design by mi104c.
Copyright © 2017 fujimotv, All rights reserved.

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。