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ずんずん歩いていると雨が降ってきた。
これはいけねーとはて右に左にあるコンビニどちらに入ろうか迷っていると、前を歩いていたおばはんが左のコンビニに入ったため、では私は右にと、まるでレジに並んでいる客のように慣性的な動きを知らない間にとっていた。
右頬に中ぐらいの雨粒が当たったのがわかった。
コンビニの中を何も考えず周遊していると大きな鏡に等身大の自分が写った。老けたな、太ったな、背ぇ伸びねーかな、髪切らないとな、証明写真撮らないとな、と、何故だか知らんが全くおもしろくない、うっかりしていると憂鬱になってしまう馬鹿野郎なことばかりを考えている私自身に気が付き、この野郎、とむっとした。
さっさとここを出て駅へ向かおう。
そういえば私はずっと駅を探していたのだった。
親父の革靴を履き、800円のリクルートバックを持ち、颯爽と夕暮れの大阪は福島の街並みを横目に阪神線福島駅を探していたのであった。その時にちょうど雨が降ってきただけのことであったのだ。
コンビニの店員にすいません顔をし、福島駅の方角を聞く。あと信号2つ分歩いたら到着です。もっとすんなりわかるようしとかんかい福島、なーんて小声で吐き出し自動ドアを出る。
このとき気が付いた。今日の私は怒りん坊のちんちくりんであることに。
雨は容赦なく降り続いている。
信号2つ分を歩き終えようとしたとき、前から電話をしながらこっちへ向かってくるおばはんにぶつかるぎりぎりで気が付いた。私は高校時代まで野球をしていたため、こういう反射神経的な場面には自信があった。まるで私がファーストランナーで牽制球が来たときに帰塁するような、そんな気分に陥り、これぞ久しぶりと言わんばかりにすっと体勢を左に傾け、しゃっとすれ違った。がしかし、身体自体は避け切れたものの私の800円のよれよれリクルートバックがおばはんの手荷物にガシーンとぶつかった。まーこんなこともある、これぐらいだったらセーフだ、私は。そう信じていたかったが、どうやら思うにおばはんのあの手荷物は、あの形、あの感触、あの音を総合的に考えると、ケーキだ。そうだ、あれは仕事帰りに子供たちに食べさせるために買ったケーキだ。そして電話相手もきっと子供だ。子供は楽しみに母親の帰りを待っていたのだ。さぞかしケーキケーキして待っていたのである。
やってしまった。そう思いながらも私は振り返ることなくろんろん歩いていた。なぜならもう目の前が阪神福島駅なのだ。ポケットには金券ショップですでに買っている三宮行きの切符も入っているのだよ。
一瞬おばはんの「あっ」という声が背後で聞こえた。その瞬間にケーキケーキしている子供たちのあらら残念そうな顔が頭に浮かんだ。それでも私はすんすん歩いた。
親父の革靴はもうびしょ濡れ、よれよれリクルートバックは変わらずよれっよれ。
私の頭はちんちくりん。もうどうにでもなれよ。私の夢を叶えてください。
肩に溜まる雨を落としたかったが、右手によれっよれを持っていることに気付き諦めた。

とある日のなんの変哲もない一日の描写である。
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 昨日あまりにもシューカツシューカツとうるさい自分の頭に喝を入れるべく、地元・湊川にある東山商店街でひとり食べ歩きツアーを敢行してきた。
 お昼にドカンと3時間の会社説明会で、でっかい船を造ってるのをさんざん見せられたあとだけあって、わたくしの胸は弾むよ弾む。
 まずは串カツ。
 店の台の上に並ぶ同じ衣色をした食材たち。しかし、それぞれが独特のしあわせ味をした串たちだ。1串80円の奇跡をなりふり構わずたっぷりのソースにつけ込み、しかしカリカリがなくなる前に食す。あーーネクタイにソースが付いた、いやしかし、いいんだ、いいんだ、そういえば、私は隠れた優良企業であるブルドックソースにエントリーしているんだった。これも勉強だ、勉強・・・
 馬鹿な、私は最高の串カツを食べているのに、自然とシューカツの事がこの私の脳裏に浮かんだではないか・・・
 気を取り直し、「タイムセール」と汚く書かれたポスターが目に入ったので、そのしょーもないパン屋に颯爽と入り込む。どうやら店内でコーヒーも飲めるらしく、珈琲300円の文字。がしかし、驚くことに店内は暗く、イスがテーブルの上に乗せられ、なんと隅っこに片づけられているではないか。
 まーそんなこともある。きっとマスターが「めんどくさい。パン一本で勝負じゃ」そう言って決心して間もない頃に私がそれは偶然に足を踏み入れただけのこと。そういえば、日産やスタバからも「今年はこっちの都合で採用しません、でもこれからもよろしくね」的なメールがきたようなきてないような・・・というより私はまたシューカツを思い出しているような・・・
 くそう。くそう。くそう。反吐がでるぜ、何故だ。久しぶりに私は何分楽しくてたまらない至極の商店街巡りをしているではないか。それなのになぜだ、なぜだ、なぜだ?
 そうこう幾分思考回路の具合が悪い中、歩き続けていると前からそれはそれは可愛げな幼稚園児らしき子供が母親らしき女性に連れられ歩いてきた。
 ちょうどその様子を同じように見ていた果物屋の店番をしていた優しそうなにいちゃんが微笑んでその子を呼び寄せ、甘そうなミカンをあげた。ちょうどその後方では羨ましそうに見つめるホームレスがいた。その親父には言わずもがなみかんは与えられなかった。
 その瞬間、一瞬だが私はあの胸糞悪いシューカツの事全てを脳裏から消え去らせた。それはそれは、本当に一瞬のことであって次の瞬間には「あれ?さっきシューカツのことで頭がいっぱいだったなー、さて何を考えてあんなにも悩んでいたのだったか」と阿呆かと言わんばかりに執着させられていたのであった。
 その後そそくさと脇道に置いてあったバイクを取りに行き、家路についた。
 もうすぐ日が沈む。今日の晩御飯はなんであろうか。帰り道、「シューカツなんてダボだな。気楽に気軽にだなこれは」とみかん色の空に吐き捨てた。

 とある日のなんの変哲もない一日の描写である。



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